ガラス溶解炉の排ガス対策:セラミック一体化システムによる超低排出ソリューション
ガラス溶解炉の排ガス特性と環境規制の現状
ガラス製造プロセスにおいて、溶解炉は最も重要な工程の一つです。ガラス溶解炉から排出される排ガスには、高濃度の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、粉塵など、多様な汚染物質が含まれています。特に、溶解温度が1,500℃以上に達する場合、熱発生型NOxが大量に生成され、環境規制対応が急務となっています。
日本の環境規制は年々厳しさを増しており、排ガス中のNOx濃度は100mg/m³以下、SOx濃度は50mg/m³以下、粉塵濃度は10mg/m³以下といった超低排出基準が求められるようになりました。従来のバグフィルターや静電集塵機、SCR脱硝装置を組み合わせたシステムでは、これらの厳しい規制値を達成することが困難なケースが増えています。
従来技術の課題と限界
ガラス溶解炉の排ガス対策として従来採用されてきた技術には、以下のような課題があります:
- SCR脱硝システム:アンモニアなどの還元剤が必要で、運転コストが高い。また、粉塵中のアルカリ成分や重金属による触媒中毒が発生しやすい
- バグフィルター:高温・高湿度条件下での寿命が短く、粘性粉塵による目詰まりが発生しやすい
- 湿式脱硫装置:排水処理が必要で、システムが複雑化する。また、排ガス再熱によるエネルギー損失が大きい
- 複数装置の組み合わせ:システムが大規模化し、設置スペースやメンテナンスコストが増大する
これらの課題を解決するため、中天威尔は革新的なガラス溶解炉の排ガス対策技術を開発しました。
セラミック一体化多汚染物質超低排出システムの技術的特長
ナノレベル孔径のセラミックフィルター
中天威尔のセラミックフィルターは、平均孔径がナノメートルレベルに制御された特殊セラミック材料を使用しています。この微細な孔径により、サブミクロン粒子の捕集効率が99.9%以上を達成し、従来のバグフィルターでは困難だった微細粉塵の除去を可能にしました。
セラミックフィルターの気布比は従来技術比で2倍以上向上し、コンパクトな設計を実現。また、耐熱温度は400℃以上、耐圧強度は1MPa以上と、過酷な運転条件でも安定した性能を発揮します。
触媒機能内蔵型セラミックフィルター
当社のセラミック触媒フィルターは、フィルター内部に脱硝触媒を均一に分散させた独自構造を採用しています。これにより、粉塵除去と脱硝反応を同一装置内で同時進行させ、システムのコンパクト化と高効率化を両立しています。
触媒はアルカリ金属や重金属による中毒に強く、ガラス溶解炉排ガス中に含まれるナトリウム、カリウム、鉛、亜鉛などの影響を受けにくい設計となっています。これにより、長期にわたって安定した脱硝性能を維持できます。
多段階汚染物質除去メカニズム
本システムは、以下の多段階除去メカニズムにより、各種汚染物質を効果的に除去します:
- 前処理段階:排ガス温度調整と粗粉塵除去
- 脱硝段階:セラミック触媒フィルターによるNOxの選択的触媒還元
- 脱硫・脱ハロゲン段階:乾式吸収剤注入によるSOx、HCl、HFの除去
- 精密集塵段階:セラミックフィルターによる微細粉塵の最終除去
実際の適用事例と性能実績
板ガラス製造プラントでの適用事例
国内の大手板ガラスメーカーにおいて、日産200トンの溶解炉に本システムを導入しました。導入前の排ガス濃度はNOx 800mg/m³、SOx 400mg/m³、粉塵50mg/m³でしたが、導入後はNOx 40mg/m³、SOx 20mg/m³、粉塵3mg/m³以下を達成し、全ての環境基準を大幅に下回る性能を実証しました。
このプロジェクトでは、従来システム比で設置面積を40%削減、運転コストを30%削減することに成功しています。また、3年間の連続運転において、目詰まりや性能劣化などのトラブルは発生していません。
特殊ガラス製造におけるHF除去性能
フッ素含有原料を使用する特殊ガラス製造プロセスでは、排ガス中のHF濃度が100mg/m³以上に達するケースがあります。中天威尔的システムは、特殊開発のアルミナ系吸収剤と組み合わせることで、HF除去効率99.5%以上を達成しています。
この適用事例では、HF濃度を1mg/m³以下に低減し、周辺環境への影響を最小限に抑えることに貢献しました。また、吸収剤の自動供給システムにより、メンテナンス頻度を月1回に抑え、操業率の向上を実現しています。
他業種への応用可能性
中天威尔のガラス溶解炉の排ガス対策技術は、ガラス業界以外にも幅広く応用可能です:
- セラミックス業界:窯業用炉、トンネルキルン
- 金属業界:鋳造溶解炉、熱処理炉
- 廃棄物処理:ごみ焼却炉、産業廃棄物処理施設
- 化学業界:化学反応炉、乾燥炉
各業種の排ガス特性に合わせて、セラミックフィルターの孔径分布、触媒組成、システム構成を最適化することで、最高の性能を発揮します。
今後の技術開発方向性
中天威尔は、現在以下の技術開発を進めており、近い将来の実用化を目指しています:
- AIを活用した最適運転制御システムの開発
- 再生可能エネルギーを利用した省エネルギー型システム
- CO2回収機能の統合
- 遠隔監視・予知保全システムの高度化
これらの技術開発により、より一層の環境性能向上と運転コスト削減を実現し、持続可能な産業発展に貢献してまいります。
まとめ
ガラス溶解炉の排ガス対策として、中天威尔のセラミック一体化多汚染物質超低排出システムは、従来技術の課題を克服した画期的なソリューションです。ナノレベル孔径のセラミックフィルターと高性能触媒の組み合わせにより、脱硝・脱硫・脱ハロゲン・集塵を単一装置で実現し、コンパクトな設計ながら高い除去性能を発揮します。
実際の適用事例でも優れた実績を積み重ねており、厳しくなる環境規制に対応する有力な選択肢として、多くのガラスメーカーに採用いただいております。今後も技術革新を続け、より良い環境性能と経済性を両立したガラス溶解炉の排ガス対策を提供してまいります。
本システムに関する詳細な技術資料、導入事例、お見積りなどにつきましては、お気軽にお問い合わせください。お客様の排ガス特性や運転条件に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。